「Single Estate」の称号は、ヴァラン・テルシニエが自社畑“La Champagne”に誇りを抱く象徴。この名がラベルに刻まれるのは、同メゾン史上初、そして唯一のことです。
この小さな畑はわずか2ヘクタールにも満たず、その名は特異な土壌構造に由来します。ボン・ボワ地区に一般的な砂質粘土とは異なり、白亜質と石灰岩が主体のため、まるでシャンパーニュ地方を彷彿とさせるテロワール。それゆえ、地元では「La Champagne(小さなシャンパーニュ)」と呼ばれています。
この特別な畑から生まれるコニャックは、トロピカルフルーツのアロマが非常に豊かで、ボン・ボワらしいミネラル感を併せ持つ、まさにこの地区最高峰の一本です。
“Small Batch”の表記は、通常シングルカスクを好むヴァラン・テルシニエとしては異例。しかしその背景には、戦時下の混乱の中でやむなく1941年と1943年の原酒をブレンドし保存したという事情がありました。結果として、偉大な作品が誕生したのです。
63〜65年の熟成を経て2006年に樽出し後、デミジョンにて静かに保管。アルコール度数48.2%、加水なし・冷却濾過なしのBrut de Fût仕様で、KirschやHeads & Tails版と同一スタイルです。
香り(Nose)は圧倒的。熟したランブータン、パッションフルーツ、グァバ、グレープフルーツといった爆発的なトロピカルアロマが立ち上がり、ボン・ボワの潜在力を鮮やかに証明します。1960年代のボウモアを思わせると評されたのも納得の芳香です。
熟成感のあるアンティーク家具、シガーボックス、スパイス入りキャラメルソースが織りなすランシオの深みと、ミネラルや土っぽさ(アーシーさ)が絶妙に調和。チョーク、ハム、雨上がりの森の香りが官能的なアクセントを添えます。
口当たり(Palate)も素晴らしく、力強くもジューシーで生き生きとした酸味が印象的。香りで感じたトロピカルノートが再び口中に広がり、余韻(Finish)ではゆるやかに伝統的なランシオの世界へ。マジパン、モカ、クラシックなアマーロがバターのように滑らかな質感で続きます。ボン・ボワのテロワールが最初から最後まで一貫して感じられます。
初心者にも理解しやすく、愛好家をも魅了する完成度。多様化・高品質化が進む現代のコニャック界において、驚きと感動をもたらす一本です(WhiskyFun:93点)。
ヴァラン・テルシニエが誇る“La Champagne”の精神をぜひご体感ください。
(カスクオーナーよりコメント)
